季節のたより
まもなく巣立ち!(8月26日追記)
夏休みに入り1週間。子どもたちの声がしない学校は、寂しさに包まれます。
が、今年は「命の営み」が見られ、私たち職員一同の心が和ませてくれています。
始まりは6月22日でした。職員室の軒下にツバメのペアがやってきて、しきりに飛び交っていました。巣作りの場所探しです。
そして翌日から土運びが行われ、6月24日に完成しました。たぶん水田のあぜ道から土をくわえてきたのでしょう。くちばしを泥まみれにしながら、見事な巣ができ上りました。
巣材に植物の茎や乾燥した葉などが織り込まれています。巣の強度を高めるためです。誰も教えていない(教わっていない)ことだと思うのですが、感心させられるばかりです。
その2日後ぐらいから、右の写真のように親が巣の中に入るようになりました。そうです。卵を産み温め始めたようです。雨の日もじっと巣に入り、周囲に絶えず気を配ります。少し子どもの声が聞こえただけでも最初のころは、頭をもたげて注意を払っていました。
7月21日のことです。巣の中を潜望鏡のようなものを作ってのぞいてみると、3羽のひなが生まれていました。親鳥が近づいて、くちばしを巣の中に差し込むようすが何度も確認できました。まだ、自力で餌をもらうことができず、親が口の中に押し込んでいるようにも見えました。
その翌日、ひなが自分で餌をもらう様子が観察できました。
よく見ると、3つのくちばしが見えます。目がまだ明いていないこともわかります。
親が来た気配を察して口を大きく開けています。
なんでも開いた口の形は菱形で、大きく開いた口に餌を差し入れる仕組みになっているそうです。
だから必死になって口を開けるのです。また、満腹になると、口を開けなくなるので、ほぼ平等に餌を食べるといわれています。
7月28日になると、目が明きました。そして、みるみるうちに体が大きくなっています。成長のスピードの速さに驚かされます。
巣の前を横切るもの(親鳥に限らず、トンボやチョウでさえ)に素早く反応して口を開けています。食欲は極めて旺盛で、親鳥たちはひっきりなしに餌を運んでいます。この時点で、梅雨明けはしていませんでしたから、まさに「雨にも負けず」といったところでしょうか。頭が下がる思いでした。
その後、すくすくと成長した子ツバメたちは、外敵(主にカラス。子ツバメを襲い、自分のひなたちの食料にすることがあります。)に脅かされることはありませんでした。
8月に入るころになると、大きくなったせいか、巣の中で窮屈そうにしています。そして、盛んに羽を広げたり、羽ばたきの練習を始めたりしました。
ときには、勢い余って巣から落ちそうになったこともありました。
右の写真は、8月5日のようすです。外の様子に興味津々という様子がうかがえます。羽も立派に生えそろい、親ツバメと見分けがつかないほどになりました。
お盆のころに巣立つことは間違いはありません。学校も閉校日になるので、その場に立ち会えないのは何とも寂しい気分です。(毎日見ているうちに情が移ってしまったようです。)
巣立った後は、しばらく親ツバメから餌の捕まえ方などを教わり、9月ごろには東南アジアへと旅立ち、冬越しをします。ある日突然姿を消すので、びっくりすること間違いありません。
そして、また春に日本へと帰ってきます。その日を楽しみに待ちたいと思います。
その後の出来事
8月17日に学校に来ると、巣は空っぽになっていました。やはり、お盆のうちに巣立ったようです。周りを見ても姿がないので、お別れができなかったなあと思っていると、何と翌日、8月18日の朝、5羽のツバメがやってきました。
懐かしそうにその周りを飛ぶ姿を見て、巣立った子ツバメ3羽と両親のようでした。子ツバメは尾羽が短く、少し頼りなさそうな感じがします。様々な試練を乗り越えて、大人になっていくのでしょう。5分ほど飛び回ると、姿が見えなくなりました。きっとお別れを言いに来てくれたのだと自分では思っています。
土用
7月21日は「土用丑の日」です。
さて、土用というと夏を思い浮かべます。しかし、1年間に4回の土用があることをご存じでしたか。 そもそも土用とは、土旺用事(どおうようじ)という言葉の略語なんだそうです。では、土旺用事とは何か。少し理屈っぽくなることを、あらかじめお断りしておきます。
古代中国の考え方に「陰陽五行説」というものがあります。それは、自然界のあらゆるものを「陰」と「陽」に分ける「陰陽論」と、自然界は「木」「火」「金」「水」「土」の5つの要素で構成されているという「五行説」とを組み合わせて、宇宙や自然などのあらゆる現象を説明する考え方です。
この五行説の5つの要素を季節にあてはめると、次のようになります。
春・・・木(植物のように発育成長する季節)
夏・・・火(勢いが頂点に達し燃えさかる季節)
秋・・・金(熱や勢いが衰え、凝縮する季節)
冬・・・水(エネルギーを蓄え、静的に留まる季節)
こうなるとおかしなことになります。「土」が出てきません。
しかし、昔の人は,土を次のようにとらえて、季節に位置付けたのです。
土・・・「植物の発芽の場所としての土」ということから
「大きな変化を促し、保護する場所・時期」
つまりは、四季の間に「土」の時期があり、移り変わりをコントロールしていると考えたわけです。
ということで、土用を、春と夏、夏と秋、秋と冬、冬と春の間に位置付けました。それで年4回あるのです。
細かく言うと、土用の期間は次のように決められています。
立春・立夏・立秋・立冬の前の18日間,今年だと、それぞれ次の期間が「土用」になります。
春土用: 4月16日〜 5月4日
夏土用: 7月19日〜 8月6日
秋土用:10月25日〜11月6日
冬土用: 1月17日〜 2月2日
さて、この土用の中で最も馴染みのあるのが「夏土用」です。
夏の土用は、1年間で最も暑さの厳しい時期にあたり、江戸時代には柿の葉を入れたお風呂に入ったり、お灸を据えたりすると夏バテに効くとされていました。
これらは、外側から効く回復方法ですが、私は内側から効く方が好きです。
それが「うなぎ」です。「土用丑の日=うなぎ」というのぼりやポスターが見かけられますが、栄養的にも疲労回復に役立つようです。
このうなぎを食べる習慣は、決して古いものではないようです。
エレキテルという治療器を発明したことで有名な「平賀源内」という人が仕掛けた宣伝広告がきっかけだったのです。
源内が、ある日知り合いのうなぎ屋と話をしていると「夏はうなぎが売れない」とぼやいているのを耳にして、「よし、任せておけ!」と1枚の紙にしたためたのが「土用丑の日、うなぎの日」だったわけです。
その宣伝文句を店先に貼ったところ、よく売れるようになったことから「うなぎの日」になったということです。
もっとも、何となく大雑把な話で、「張り紙一枚でそんなに変わるのか…経緯がはっきりしない」という疑問も浮かぶのですが、そういうことにしておきたいと思います。
夏の庭で
激しい雨が降り続いています。また、予想すらできないほどの大きな被害に、自然の恐ろしさを痛感させられるばかりです。
平年だと7月19日が梅雨明けだといいますから、まだしばらくは雨が続くのかも知れません。
気象庁の統計によると、九州北部の梅雨明けで最も早かったのは1994年の7月1日、最も遅かったのは2009年の8月4日ごろのようです。その差が1ヶ月以上ありますから驚きです。
もっとも夏休みが近づくにつれて、梅雨も収束に向かうことは間違いがなさそうですので、一日でも早く青空が広がることを願わざるを得ません。
さて、今月の話題に入ります。
ちょっとしたクイズを出します。「あるなしクイズ」というものです。
〇〇はあるが、◇◇はない…というヒントから、そのものを当てるというものです。
では、次の文を読んで、あてはまるものを考えてください。
・ナガサキはあるが、クマモトはない。
・カラスはあるが、スズメはない。
・黃色や黒はあるが、緑や赤はない。
・帝(みかど)はあるが、将軍はない。
もしすぐに「ピン!」ときたり、お分かりになったりした方は、昆虫に深い関心をおもちではないでしょうか。
実は、アゲハチョウの仲間の名前を表したものなのです。
様々な種類のアゲハチョウがいますが、「ナミアゲハ」「キアゲハ」「アオスジアゲハ」は、校内でもよく見かけます。
このアゲハチョウの仲間は、同じアゲハチョウであっても幼虫の食べる植物が違います。一例を挙げると次のとおりです。
チョウの名前 主に食べる植物名
ナミアゲハ ミカン、カラタチ、サンショウなどのミカン科
キアゲハ ニンジン、ハナウド、セリ科
アオスジアゲハ クスノキ科、タブノキ
ジャコウアゲハ ウマノスズクサ類(毒草)
クロアゲハ ミカン、カラタチ、セリ科
ミカドアゲハ クスノキ科、モクレン科
びっくりするのは、ジャコウアゲハが食べるウマノスズクサという植物には、アルカロイドと呼ばれる成分が含まれています。この植物を食べ続けることで、毒を蓄積させ鳥などの天敵に食べられないようしているのです。実に優れた「身を守る術」だと言えます。
さらに驚かされるのは、チョウたちが「卵を産むにふさわしい植物」を誰に教えられることなく見つけているということです。
ある昆虫学者の著作によれば、次のように説明されています。
母であるチョウ(母蝶と呼びます)は、まず飛びながら,目で色や形を見分け、卵を産むべき植物を探す。よさそうな植物を見つけたら、近づいて触角でにおいを確認、前脚で葉の表面を確かめる。もしそれがめあての植物だと確認できたら、一粒ずつ黄白色の卵を産み付けていく。
これは、自分が幼虫だったときの記憶がもとになっているということなのでしょうか。だとすると素晴らしい記憶の保持ということではないかと思います。
現在、職員室軒下で、ツバメが両親が交代しながら巣の中で卵を抱いています。
この営みも、きっと親がしていたことをどこかで覚えていて、自然に行っている行動なのでしょう。一生懸命に卵を温めている姿には頭が下がります。
近いうちに雛がかえり,さかんにエサをねだる姿ももうすぐ見ることができると思います。
生き物には、人間の想像を遥かに超える優れた能力があります。小さな命ですが、尊い命で我々が見習うべき力を持っているように思えてなりません。
でんでんむし
「梅雨」です真っ盛りです。降り続く雨の無垢に見えるアジサイが美しい季節です。
この時期に、校内のあちらこちらで目にする生き物があります。
それは「カタツムリ」です。シトシト降る雨の中でも生き生きと動き回っている姿を目にすると、夏が近づいてくることを実感させられます。
カタツムリそのものは有名ですが、詳しく調べることは余りないと思います。そこで、今回は「カタツムリ」の話題でまとめます。
カタツムリは何の仲間?
スズメは鳥の仲間、メダカは魚の仲間。では、カタツムリは…?
子どもたちに尋ねてみて、最も多かった答えは「虫」でした。なるほど別名が「でんでん虫」ですから、虫と思ったようです。
でも、正確には「昆虫」の条件を満たしていません。
①体が頭・胸・腹に別れている、②足が胸の部分から6本出ているという姿とはほど遠いからです。
正解は「貝」の仲間なのです。殻があることや、体の形が海の中にいるサザエなどの貝とよく似ています。正式には,陸貝(陸に生息する腹足類)のうちの殻をもつものの名前です。
カタツムリとナメクジの違いは?
これは、簡単にいえば「殻のある、なし」の違いだそうです。ナメクジにも(種類によっては)殻があった痕跡があるそうです。
でんでん虫という名の由来は?
子どもたちが殻から出てこいと囃し立てた「出ろ出ろ虫」→「出ん出ん虫」→「でんでん虫」となった説が有名です。 この他に、狂言の「蝸牛」で唄われた歌の歌詞から由来したとも言われています。
狂言「蝸牛」とはどんな話?
狂言と言えば、必ず登場するのは「太郎冠者(たろうかじゃ)」〜いわゆる主人公です。
この「蝸牛」は、太郎冠者はもちろん次の人物が出てきます。
・太郎冠者 ・主人 ・山伏
お話のあらすじは、次のようなものです。
ある日、太郎冠者(以下「太郎」)は、主人の叔父のために長寿の薬となる「かたつむり(蝸牛)」を探してくるよう主人から言いつけられた。
かたつむりがどんな生き物なのか全く知らなかった太郎は、かたつむりの5つの特徴を教わり、早速,山に探しに出かけた。
5つの特徴とは,次のとおり。
①やぶの中にいる
②頭が黒い
③腰に貝を付けている
④時々角を出す
⑤大きいものは人間ぐらいある
太郎がかたつむりを探し始めた頃、修行帰りの山伏が,疲れ果ててやぶの中で眠っていた。
そこへ通りかかった太郎は、その山伏をかたつむりだと勘違いしてしまう。勘違いした理由は、
①やぶの中にいる→確かにいた。
②頭が黒い→兜巾(ときん)をつけている。
③貝を付けている→法螺貝をつけている。
④角を出す→身につけていたものがそれらしく見える。
⑤大きさ→最大サイズ。
太郎の話を聞いた山伏は、少々からかってやろうという気になって、とうとう歌を歌わせ,踊らせる。
その歌詞が、次のもの。
「ハア 雨も 風も 吹かぬに 出ざ 釜 打ち割ろう
でんでん むしむし でんでん むしむし」
(雨も風もないのに顔を出さないならば、殻を打ち割って
しまうぞ。出てこい虫 出てこい虫」
山伏にだまされた太郎が踊りほうけていると、主人が帰りの遅い太郎を探しに来ます。太郎の姿を見て、主人は「かたつむりではなく、山伏である」ことを太郎に教え、2人で山伏を懲らしめようとします。
ところが、山伏は法力を使って、主人まで巻き込んで踊らせます。
太郎と主人が我に返ったときは、山伏はどこかへ行ってしまった後だった。
少々時間がかかりましたが、でんでんむしの名の由来の説明ができました。「出てこい虫」が「でんでん虫」になったというわけですね。
コンクリートの上を這うのはなぜ?
カタツムリの殻は,カルシウムが含まれています。成長するにつれて殻も大きくなっていきます。
一方コンクリートにもカルシウムが含まれています。
つまり、カタツムリはコンクリートやブロック塀の表面を囓りながら動き回っているというわけです。
実際、よく表面を見てみると小さな筋のようなモノが見えることがあります。これは、囓った跡なのですね。
梅雨といえばうっとうしい季節ですが、少し身のまわりの生き物に目を向けてみると、いろいろな謎に気付いたり,新たな発見があるかも知れません。「雨もまた楽し」です。
湿度が高く、過ごしにくい毎日ですが,くれぐれもご自愛ください。
田植えのころ
この時期あちらこちらの農地で、田植えの準備が行われています。
よく見ると、トラクターの後ろを鳥たちがついていきます。
この鳥たちは、主にサギの仲間です。灰色のは「アオサギ」白いのは「チュウサギ」のようです。
見ていると、トラクター通過後の地面をつついています。これは、掘り起こした土と一緒に虫などがあらわれたのをついばんでいるのです。
人間の営みをうまく利用して生きる野鳥のたくましさを感じさせられます。
数年前、こんな場面に出会いました。
アオサギがトラクターの横の、前輪の通過地点を見ています。どうやら他のサギより早くエサを食べるために智恵を使ったようです。
実に大胆なエサ探しです。しかし、トラクターは進んでいます。
「そのまま進むとサギが危ない!」と思っていると、トラクターは静かに止まりました。
「ああよかった」と思いました。でもなぜ止まったのだろうと思い、カメラのファインダーを覗き直すと、そこにはアオサギを見守る農家の方(運転手)の姿がありました。
優しい農家の方のおかげで、アオサギはゆうゆうと食事をすることができました。
何だか気持ちがほっこりするような出来事でした。