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2020年7月の記事一覧

土用

 7月21日は「土用丑の日」です。

 さて、土用というと夏を思い浮かべます。しかし、1年間に4回の土用があることをご存じでしたか。 そもそも土用とは、土旺用事(どおうようじ)という言葉の略語なんだそうです。では、土旺用事とは何か。少し理屈っぽくなることを、あらかじめお断りしておきます。

 古代中国の考え方に「陰陽五行説」というものがあります。それは、自然界のあらゆるものを「陰」と「陽」に分ける「陰陽論」と、自然界は「木」「火」「金」「水」「土」の5つの要素で構成されているという「五行説」とを組み合わせて、宇宙や自然などのあらゆる現象を説明する考え方です。

 この五行説の5つの要素を季節にあてはめると、次のようになります。

春・・・木(植物のように発育成長する季節)
夏・・・火(勢いが頂点に達し燃えさかる季節)
秋・・・金(熱や勢いが衰え、凝縮する季節)
冬・・・水(エネルギーを蓄え、静的に留まる季節)


 こうなるとおかしなことになります。「土」が出てきません。
 しかし、昔の人は,土を次のようにとらえて、季節に位置付けたのです。

土・・・「植物の発芽の場所としての土」ということから
    「大きな変化を促し、保護する場所・時期」
 つまりは、四季の間に「土」の時期があり、移り変わりをコントロールしていると考えたわけです。

 ということで、土用を、春と夏、夏と秋、秋と冬、冬と春の間に位置付けました。それで年4回あるのです。

 細かく言うと、土用の期間は次のように決められています。

立春・立夏・立秋・立冬の前の18日間,今年だと、それぞれ次の期間が「土用」になります。


春土用: 4月16日〜 5月4日

夏土用: 7月19日〜 8月6日

秋土用:10月25日〜11月6日

冬土用: 1月17日〜 2月2日

 

 さて、この土用の中で最も馴染みのあるのが「夏土用」です。
 夏の土用は、1年間で最も暑さの厳しい時期にあたり、江戸時代には柿の葉を入れたお風呂に入ったり、お灸を据えたりすると夏バテに効くとされていました。
 これらは、外側から効く回復方法ですが、私は内側から効く方が好きです。
 それが「うなぎ」です。「土用丑の日=うなぎ」というのぼりやポスターが見かけられますが、栄養的にも疲労回復に役立つようです。


 このうなぎを食べる習慣は、決して古いものではないようです。
 エレキテルという治療器を発明したことで有名な「平賀源内」という人が仕掛けた宣伝広告がきっかけだったのです。

 源内が、ある日知り合いのうなぎ屋と話をしていると「夏はうなぎが売れない」とぼやいているのを耳にして、「よし、任せておけ!」と1枚の紙にしたためたのが「土用丑の日、うなぎの日」だったわけです。
 その宣伝文句を店先に貼ったところ、よく売れるようになったことから「うなぎの日」になったということです。
 もっとも、何となく大雑把な話で、「張り紙一枚でそんなに変わるのか…経緯がはっきりしない」という疑問も浮かぶのですが、そういうことにしておきたいと思います。
 

 

夏の庭で

 

 激しい雨が降り続いています。また、予想すらできないほどの大きな被害に、自然の恐ろしさを痛感させられるばかりです。
 平年だと7月19日が梅雨明けだといいますから、まだしばらくは雨が続くのかも知れません。
 気象庁の統計によると、九州北部の梅雨明けで最も早かったのは1994年の7月1日、最も遅かったのは2009年の8月4日ごろのようです。その差が1ヶ月以上ありますから驚きです。
 もっとも夏休みが近づくにつれて、梅雨も収束に向かうことは間違いがなさそうですので、一日でも早く青空が広がることを願わざるを得ません。


 さて、今月の話題に入ります。
 ちょっとしたクイズを出します。「あるなしクイズ」というものです。
 〇〇はあるが、◇◇はない…というヒントから、そのものを当てるというものです。
 では、次の文を読んで、あてはまるものを考えてください。

・ナガサキはあるが、クマモトはない。
・カラスはあるが、スズメはない。
・黃色や黒はあるが、緑や赤はない。
・帝(みかど)はあるが、将軍はない。

 もしすぐに「ピン!」ときたり、お分かりになったりした方は、昆虫に深い関心をおもちではないでしょうか。

 実は、アゲハチョウの仲間の名前を表したものなのです。
 様々な種類のアゲハチョウがいますが、「ナミアゲハ」「キアゲハ」「アオスジアゲハ」は、校内でもよく見かけます。 


 このアゲハチョウの仲間は、同じアゲハチョウであっても幼虫の食べる植物が違います。一例を挙げると次のとおりです。

 チョウの名前      主に食べる植物名
 ナミアゲハ     ミカン、カラタチ、サンショウなどのミカン科
 キアゲハ       ニンジン、ハナウド、セリ科
 アオスジアゲハ    クスノキ科、タブノキ
 ジャコウアゲハ   ウマノスズクサ類(毒草)
 クロアゲハ     ミカン、カラタチ、セリ科 
 ミカドアゲハ    クスノキ科、モクレン科 

 びっくりするのは、ジャコウアゲハが食べるウマノスズクサという植物には、アルカロイドと呼ばれる成分が含まれています。この植物を食べ続けることで、毒を蓄積させ鳥などの天敵に食べられないようしているのです。実に優れた「身を守る術」だと言えます。
 さらに驚かされるのは、チョウたちが「卵を産むにふさわしい植物」を誰に教えられることなく見つけているということです。


 ある昆虫学者の著作によれば、次のように説明されています。

母であるチョウ(母蝶と呼びます)は、まず飛びながら,目で色や形を見分け、卵を産むべき植物を探す。よさそうな植物を見つけたら、近づいて触角でにおいを確認、前脚で葉の表面を確かめる。もしそれがめあての植物だと確認できたら、一粒ずつ黄白色の卵を産み付けていく。

 これは、自分が幼虫だったときの記憶がもとになっているということなのでしょうか。だとすると素晴らしい記憶の保持ということではないかと思います。


 現在、職員室軒下で、ツバメが両親が交代しながら巣の中で卵を抱いています。
 この営みも、きっと親がしていたことをどこかで覚えていて、自然に行っている行動なのでしょう。一生懸命に卵を温めている姿には頭が下がります。
 近いうちに雛がかえり,さかんにエサをねだる姿ももうすぐ見ることができると思います。
 生き物には、人間の想像を遥かに超える優れた能力があります。小さな命ですが、尊い命で我々が見習うべき力を持っているように思えてなりません。