学校だより

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おかげさま

 日曜日の明け方、久しぶりに祖母の夢を見ました。
 私には、百歳の天寿を全うした祖母がいました。若くして連れ合い(祖父)を病気でなくし、女手一つで子ども二人(母と叔父)を育て上げた肝っ玉ばあちゃんです。

 教師だった祖母の影響を受けて、私も同じ道を選びました。
 ばあちゃん子だった私は、祖母の布団に潜り込んで聞く「昔話」を楽しみにしていました。愉快な話、訓話、不思議な話、怖~い話などいろんな話をしてくれるのですが、どんな話も最後は決まって「神様、仏様、世間様のお陰さまで」で締めくくります。

「おかげさま」    上所(かみどころ) 重助

夏が来ると 冬がいいという

冬になると 夏がいいという

ふとると やせたいという

やせると ふとりたいという

忙しいと 閑(ひま)になりたいといい

閑になると 忙しいほうがいいという

自分の都合のいい人は よい人だとほめ

自分に都合が悪くなると 悪い人だと貶(けな)

借りた傘も 雨が上がれば邪魔になる

世帯を持てば 親さえも邪魔になる

衣食住は昔に比べりゃ天国だが 

上を見て不平不満に明け暮れ

隣を眺めて愚痴ばかり
 
どうして自分を見つめないのか

静かに自分を見るがよい

一体 自分とは何なのか

親のおかげ 先生のおかげ

世間様のおかげの塊(かたまり)が自分ではないか

つまらぬ自我妄執(もうしゅう)を捨てて

得手勝手を慎んだら 

世の中きっと明るくなるだろう

おれが おれが を捨てて

おかげで おかげで と暮らしたい     ※一部省略
     

     ※妄執(心の迷いによる執念) 
     ※得手勝手(他人のことは構わず、自分の都合のよいことばかり考えること)

 ふと目にとまった詩です。祖母の昔話と「お陰様で」という口癖を思い出しました。
 スイカを切っても、いつも切れ端しか手に取らない祖母でした。熊本の病院に見舞いに行っても、すぐに「はよ帰らんな」と帰りの道中を心配する祖母でした。
 思い通りにならないのが世の中。身勝手は人の常。十人十色、いろんな考えの人がいて、いろんな価値観が混在しているのも当然のこと。周囲に対しての不平不満を口にするよりも「お陰様で」と感謝しながら日々を生きる方が、自分の心も楽になるし、周囲にも迷惑がかからない。祖母の昔話と同じように、この詩もそんなことを告げているのかも知れません。

 柔らかい祖母の手を、また触りたいと願った日曜日でした。