校長室だより

天国と地獄の長い箸

 1月11日始業式の校長講話では、正月の祝い箸にちなんで次のような話をしました。

 天国にも地獄にも、どちらにも十分な美味しい食べ物が用意されていました。とてもとても大きな鍋を皆でぐるりと囲んで食事を頂くのですが、天国の人たちにも、地獄の人たちにも用意されているのは、それはそれは長い箸でした。
 2mもあるような長~い箸。必ずその箸を使って食べなければならないというのが、天国と地獄の共通の決まり事でした。
 地獄の人たちは、とんでもなく長いその箸で、自分の口に食べ物を運ぼうとしましたが、何度やっても食べ物はこぼれるばかり。食べることはできませんでした。どんなにご馳走が目の前に用意されていても食べることは叶わず、常に飢えに苦しみ、そのせいで争いも絶えない状態でした。
 では、天国の人たちはというと、たくさん美味しいものを食べ、誰もが幸せに満たされた顔をしていました。

「さて、何故でしょう?」「何故、天国の人たちは食べられるのでしょう?」と、長~い箸を用意して、実際に何人かの子ども達に使わせてみながら尋ねました。「わぁ、こんな長い箸じゃ食べられない。」「無理だ~。」「長すぎる~。」という声の中で、6年生の女の子が「食べさせてやればいい。」と答えました。そう、その通りです。

なぜなら、みんな、その長い箸を人のために使っていたのです。鍋を挟んで向かい側にいる人に「はい、どうぞ。」と食べ物を届けていたのです。
「まずは、あなたからどうぞ。」そう自然に思える人たちの集まる天国は、飢えも争いもない、皆が笑い合える幸せの世界でした。

  実際の世界には2メートルもの長い箸で食事をするなどというルールはありません。ですが、いろんな考えの人がいる世の中で暮らしていくことは、長い箸で食事をするのと同じくらい大変なことです。そんな世の中で「相手を思いやる気持ち」と「人と協力しようという気持ち」は、人と人の心を結ぶ大切な「かすがい」となります。
 姫戸小の合言葉である「4つのあたりまえ」(あいさつ・あつまり・あとしまつ・ありがとう)は、まさしく「思いやる気持ち」「協力の大切さ」をみんなで行動として表そうとする「約束」です。自然に、当たり前に、みんなで「約束」を意識できたら素敵ですね。ご家庭や地域でも話題にしていただければ幸いです。

 姫戸小の合言葉「4つのあたりまえ」
 あいさつ (こちらから、誰にでも、真心こめて)
 あつまり (時間を守る、約束を守る、ルールを守る)
 あとしまつ (次に使う人の気持ちを考える)
 ありがとう (相手の心づかいに気づく、感謝する)

 2022年は、十二支でいうと「寅年」、十干では「壬」となり、干支は「壬寅」(みずのえとら)となります。「新しく立ち上がる」「生まれたものが成長する」といった縁起のよさを表しています。

 先述の「天国と地獄の長い箸」の話は、深く考えれば、「まず先に自分から人に与えよ、自我に執着するな、自我への執着が全ての争いや苦しみの原因である」ということを説いているのかも知れません。「相手はこちらに食べ物をくれるかどうかはわからない、でもとにかくまず最初に自分から人に与えよ、自我に執着するな」と。

 春の胎動が大きく花開くために、地道な自分磨きを行い、実力を養っていきたいものです。