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まもなく啓蟄

すっかり春めいてきました。少しずつ温かさを感じる場面が増え、道端の花にふと目が向くようになりました。
 3月5日は「啓蟄(けいちつ)」です。
 啓蟄とは、暖かい気配を感じ、巣ごもりしていた小動物が姿を見せるという季節の言葉です。(啓:開く)(蟄:すごもり虫)
 よく小動物の部分を、虫のことだと説明している文章もありますが、一昔前は虫の中に、ヘビやカエルも含まれていました。(例えば、長虫というのはヘビのことです。)


 さて、「春」という漢字がが一部になった漢字がありますが、なんという漢字か思いつかれますか?
 それは「春」の下に虫が2つくっついた

   「蠢(うごめく)」
という漢字です。
 見て分かるように、春になって虫たちが姿を現し、動き回るから「蠢く」なのかも知れませんね。

 先日まで、土の色一色だった学校そばの農地を見ると、いつの間にか表面に草が芽吹き、鮮やかな緑色に覆われています。

よく見ると、たくさんの若芽や花で色づいてきているのです。生き物たちは、微妙な季節の変化を感じ取りながら、花開かせているのだと思うとびっくりさせられるばかりです。


 さて、今月のこのコラムでは、校庭の片隅に咲いていたスミレの話をまとめてみます。
 みなさんはスミレにどれくらいの種類があるかご存じですか?
 20種類?50種類?…。
 実は、スミレの図鑑ができるほどたくさんの種類があります。日本国内だけで100種類以上。世界中では400種を超えるといいます。私が学生のときに、本屋さんの棚に「日本のスミレ」(うろ覚えですが、こんな感じの名前の図鑑でした)を見つけ、どのページを開いても、〇〇スミレという名前が載っているのに驚嘆した記憶があります。
 ちなみに、校内に咲いているスミレもスミレ、タチツボスミレ、ノジスミレの3種類が咲いているようです。

 スミレという名前の由来は、大工道具のあると言われています。かの著名な植物学者である牧野富太郎氏の説によれば、墨入れ(墨壺)の形と花の形が似ていることから、【スミイレ→スミレ】に変化したとのことです。しかし、あくまでも一つの説であって異論もあります。
 スミレの名は万葉集にも登場します。その時代に(今使われているような)墨壺があったのかという疑問が生まれたためです。
 その疑問を持った人々は、染料として使われたことから「染みれ」だったり、摘まれることから「摘まれ」だったり…という由来を唱えています。


 スミレという植物は、サバイバルのプロです。
 というのも、彼らの種の保存方法は3段階で成り立っているのです。そのことを紹介します。

 生き残りの第1段階 3月から5月は、普通に花を開いて受粉し、実(種)を結ぶ。
 これは、ごく普通の植物のふえ方です。

 生き残りの第2段階 夏から秋の終わりにかけては、閉鎖花をつけては種を飛ばし…を繰り返す。
 閉鎖花というのは、つぼみの形のままで、自家受粉して実を結ぶという花の形です。花は咲いていないのに、種ができていてビックリという経験をしたことがあります。

 生き残りの第3段階 飛ばした種に「エライオソーム」というアリ(蟻)が好む物質を付けておき、アリに運んでもらい生育地から遠く離れた場所での芽生えを目指す。
 アリに運ばせるという作戦をとる植物は結構多いそうです。アケビやシソの仲間でも同じことをするそうです。


 なかなかいろいろな知恵をめぐらして、生きていることには驚かされます。この様子を観察するには、今頃の時期に道端のスミレを掘り上げて、植木鉢に移してみるといいと思います。きっと「スミレってすごいなあ」と実感できることでしょう。